|
|
【fragment】
かたちは全て断片の凝集と連続でできている。
遥か彼方に見える山の稜線として理解していた物は、近づいていけば岩石や樹木、あるいは民家や高圧線、
自然物と人工物のごちゃ混ぜによって構成された物であることに気がつく。
世界の一部を取り出し、あらたなかたちの起点とする試み。
|
【first cry】
全てが混ざり、溶け合い、混沌とした原始の海に産声を上げた生命は、
やがてはっきりと輪郭を持つようになる。
最も鋭い輪郭は、サメの鱗のように水すらも寄せ付けない形態をとり、
形が、自分がここに存在していると主張し続ける。
|
【once】
遠い遠い昔のお話。
御伽噺は語り継がれていきながら、時間と共に少しずつ内容を変えていく。
しかし、確信の部分はDNAのように変わらずに紡がれ続ける。
そんな様々なお話を内包しながら、
うねり、波打ち、固まり、砕ける海の一瞬のようなかたち。
|
【beginning】
生命の始まりは、海中で他の物質と自分を分ける膜を作ったことからだった。
そこに形の始まりがある。
膜であり、海であり、形があるもの、そんな存在を作ってみたかった。 |
【solid mirage】
私たち生物の輪郭は、常に変化しながらかろうじて今ある自分の形を保つ。 続いていく為には変わっていかなくてはならない。
骨は死の象徴でありながら、私たちの一生の尺度では変化しない永遠の姿でもある。
外骨格を持つ生物達は、生前から、既に虚ろな死の気配と永遠をその身に宿して、私たちの間をさまよいながら存在し続ける。 |
【exuvia】
植物が体を支え、栄養を吸収するために、根を張るように、動物は神経や血管、筋肉が骨との間で張力を保っている。
繊維によって生物の形は緊張し、弛緩する。
不定形で数量化できない生物の形を、繊維を1本1本張り込んでいくことで、揺らぎを含んだまま抽出できるのではないか。
結果的に内部が虚ろな状態が生まれ、生物としての機能は持たずに、ただ痕跡のみが残る。
exuvia-抜け殻-くらいは出現したのではないだろうか。 |
【feeler】
臭い、味を確かめること。それらは物質と生物個体が出会う瞬間。
人間はその為の器官を体の中に隠し、昆虫は触った瞬間に理解する。 |
|
|